コラム

 公開日: 2016-05-23 

定年後の再雇用で同じ仕事同じ責任なのに賃金を下げるのは違法?

 運送会社で60歳定年を迎えたドライバー3人が、1年ごとの属託として再雇用されましたが、定年前と同じ仕事をしているにも関わらず、属託の賃金規定が適用され、定年前の年収より2~3割下がりました。これを不服として、3人は会社に対して給与の差額を支払うよう裁判に訴え、東京地裁で「業務の内容や責任が同じなのに賃金を下げるのは、労働契約法に違反する」と認定し、会社にその支払いを命じました。賃金格差に対して同法律の違反を認めた判決は今まで無く、定年後の給与水準について、大きな波紋が広がりそうです。

同一労働同一賃金とは?

 「同一労働同一賃金」は、アベノミクスの重要課題として、良く耳にするようになりました。非正規雇用の賃金を引き上げ、格差の是正を図るための政策です。しかし、何を基準に「同一労働同一賃金」かは、それぞれ立場によって違い、それぞれが都合よく解釈してしまっていることが今回の背景にありそうです。
 欧米のような「職務給」ではなく「職能給」的な給与である日本では、そもそも具体的な職務があいまいで欧米と比べて「同一労働同一賃金」は定義しにくい事情もあります。「職務給」の欧米でも勤続年数、キャリアコースの違い、学歴、所持資格などの違いで賃金に差がつくことは「同一労働同一賃金」に反しないとされています。また、日本では、欧米にはない年齢や年功が反映されて賃金が構成されています。若いときには、賃金が低く、年齢を重ねていくことで上がっていきます。そうすると、若いときには、本来の働きより低い賃金、年齢が高くなっていくと本来の働きより高い賃金を支払う形になります。定年年齢の60歳時点では、一番高い賃金になっているとも言えます。だから、60歳定年後は、本来の働きに応じた賃金まで下げる、という考えを企業側はする訳です。それに年金の支給開始年齢を60歳から65歳へ段階的に引き上げ、65歳までの継続雇用の義務化を図ったのは国の方で、その人件費を60歳以降同じ金額で負担しなければならないとすれば、企業側にしてみれば、大きな負担です。しかし、それでも裁判では、60歳以降も同一賃金を支払わなければならないとしました。

今後どうなるのか?

 会社は、今回の判決を不服として、高裁に控訴しました。ですから、今後の展開でどのように判断されるか、まだ判らないというところです。「同一労働同一賃金」について、どのような場合に例外が許されるか、2018年に国も指針を出す予定です。この指針や、今回の裁判の最終的(高裁、最高裁)な判決による判例、その他の判例などが出そろってくることで、日本においての「同一労働同一賃金」の定義が見えてくると思います。
 ただし、これを待っていて、今回の判例が例えば最高裁でも同じ判決になるようですと、60歳以降、同一の労働をして賃金を下げられた従業員から会社は、損害賠償をされかねません。そうならないためには、60歳以降賃金をどうしても下げなければならないとすれば、例えば60歳以降は、一切残業はしなくてよいとか、楽なルートの配達しかさせないなど、何らかの労働条件の変更をして、それに見合った賃金に引き下げたという合理的な理由を作る必要があるでしょう。

この記事を書いたプロ

影山社会保険労務士事務所 [ホームページ]

社会保険労務士 影山正伸

千葉県市川市南八幡4-17-14 中村ビル5階 [地図]
TEL:047-393-6220

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

0

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
給与計算(代行)

「給与計算を従業員に任せているけど、全員の給与がばれてしまうよな…。」「給与計算をしている従業員が急に辞めてしまった。」「給与計算を妻に任せているけど、しょ...

プライバシーマーク取得
イメージ

 一般財団法人日本情報経済社会推進協会認定のプライバシーマークを平成28年3月8日取得しました。2年間の付与となります。 個人情報(マイナンバー含む)を大切に...

 
このプロの紹介記事
メイン画像/労働基準監督署での実務経験などを強みに持つ社会保険労務士・影山正伸

手続、給与計算から労務管理、人事体系整備までオールマイティ(1/3)

 社会保険労務士(以下、社労士)は、労働・社会保険諸法令に基づく申請書・届出書・報告書・審査請求書・異議申立書等の書類作成代行などを行い、また、企業経営上の労務管理や社会保険に関する相談・指導を行うことを任務とする国家試験合格者です。 影...

影山正伸プロに相談してみよう!

朝日新聞 マイベストプロ

給与計算含む労務管理、従業員トラブル解決、人事体系整備に強み

会社名 : 影山社会保険労務士事務所
住所 : 千葉県市川市南八幡4-17-14 中村ビル5階 [地図]
TEL : 047-393-6220

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

047-393-6220

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

影山正伸(かげやままさのぶ)

影山社会保険労務士事務所

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
算定基礎届提出時に、年金事務所の調査が本格化しています。

 社会保険(厚生年金保険・健康保険)に未加入事業所に対する調査が、本格化していることは、既に下記コラムで掲...

[ 年金事務所の調査 ]

改正「労働契約法」に伴う、雇用契約書、就業規則の変更について/市川市 社会保険労務士 就業規則

いよいよ、4月1日より労働契約法が改正されますが、対策は大丈夫でしょうか?私が一番気になっているのが、平成2...

[ 就業規則、作成・変更 ]

「キャリアアップ助成金」について : 助成金 / 千葉県 市川市 社会保険労務士 助成金申請

キャリアアップ助成金が創設されました。http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/...

[ 助成金 ]

「懲戒解雇」には、「就業規則」が必要/千葉県 市川市 社会保険労務士 就業規則作成

 このところ、飲食店やコンビニでのアルバイト店員による不適切な写真投稿(冷蔵庫の中から顔を出して写真を撮っ...

[ 就業規則、作成・変更 ]

整理解雇 / 市川市 社会保険労務士

ルネサスが整理解雇を回避した、と産経ニュースにありました。http://sankei.jp.msn.com/economy/news/121003/biz...

[ リストラ ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ